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「マンゴープリンをカップル割りで」
後日、わたし達は晴れてカップル割の対象となりマンゴープリンを注文する。
「ミユはバイト代出たら何を買うんだ?」
青山君の誕生日プレゼントを買うためバイトをしてきたが、その必要はない。
「あぁ、それなんだけど。ペアのヘルメットはどうかなって。バイク、二十歳になったら乗せてくれるんでしょ?」
「ペア?」
「あ、やっぱりバカップルっぽい? 気が早すぎ?」
「いや、バカップル上等じゃん。しかも二十歳になっても付き合ってるのを想定してくれて嬉しい」
「意外、お揃いとか嫌うと思った」
「ミユ限定でなら。長い間片思いしてたからさ、ミユが彼女って触れて回りたいくらい浮かれてる。あと男共への牽制にもなるしな」
「はぁ、わたしはそちらの方が心配だけど? 相変わらず告白されてるって話じゃない?」
「されてるけど、ちゃんとお断りしてる。あ、想ってくれた子には誠意を持って接してるから。もうお試しも仮初めも御免だ」
マンゴープリンが運ばれてきた。カップル割りにするとニ人前が一つの皿に盛られ、シェアして食べるようになっている。
「はい、あーん」
片桐がスプーンを口元へ寄せてきた。
「え、いや、恥ずかしいよ。自分で食べられるし」
「あーん」
小首を傾げ、繰り返す。わたしは諦め、キョロキョロ周囲を確認してからパクリと食べた。
「美味しい?」
「う、うん」
「そ、良かった」
恥ずかしくて本当は味など分からなかったが、彼が蕩けた表情をするので口の中が甘酸っぱくなる。
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