86人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「あのさ、わたしが言うべき事じゃないと思うんだけど、お試しで付き合うとか止めておきなよ」
「どうして? そこから本当に好きになるかもしれないじゃん? 自分を知って貰うチャンスなのに?」
彼女の言い分はよく分かるし、否定はしない。というか否定なんか出来ない。何故なら青山君に告白した際、わたしも仮初めの彼女でもいいからと食い下がったから。
まぁ、この仮初めの彼女というのも片桐を見ていて思い付いたんだけど。
「ミユ、オーダーいける?」
噂をすれば影、片桐がキッチンを覗く。
「あっ、アタシやるよ!」
さっそくアピールしようと張り切る新人に片桐は柔らかく微笑む。バイトの時は前髪をピンで留めて襟足を結っており、表情がよく見える。
「じゃあ、お願いできる? 無理っぽかったら一人でやり切ろうとせず、ミユにフォロー頼んでね?」
「は、はい! 頑張る!」
「あははっ、頼もしい。ミユ、期待の新人が入ってきて良かったな。人手が足らない足らないってグチってたじゃん」
流石、大型犬。鼻がよく効く。自分に好意を寄せる相手を嗅ぎ分ける能力が高い。
最初のコメントを投稿しよう!