ヴァイオレットの憂鬱

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ヴァイオレットの憂鬱

わたしは快晴の空を見上げ、ため息をつく。 「雨、降らないかなぁ」 わたしはヴァイオレット・アゼリア。 公爵家の令嬢です。 前世では、雨宮梨花という日本人でしたが、 妹の翠を車から庇い高校生で命を落とし、この異世界に転生したのです! わたしは今悩んでいることがある。 それは雨が降らないということだ。 屋敷の庭でトマトを育てているけど 今年の夏は全然雨が降らない。 自分で水をあげればいいのでは?と思うよね。 農家ならお世話をちゃんとすると思う。 だけど、私は農家ではない。 公爵令嬢だ。 土いじりや水やりを少しでもやろうものなら 庭師に「お嬢様、そのようなことは おやめください!」と言われる。 しかし、この庭師、全然水をあげないのだ。 週に一〜ニ回しか水やりをしない。 これではせっかく育った トマトもダメになってしまう。 だからわたしはこうして 雨が降るのを願っているのだ。 翌日、お母様と絵本を読んでいると パラパラと雨が降ってきた。 わたしは思わず立ち上がる。 「雨が降ったわ!」 雨よ、その調子でもっと降ってくれ。 お母様が不思議そうにする。 「レティ、そんなに雨が好きだったかしら」 今までは雨が嫌いだったが今は好きだ。 私はにっこり笑った。 〈終わり〉
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