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「奈々、会いに来たよ」
仕事終わり、職場を出るとまた彼が待っていた。
「いい加減にして」
ため息混じりにそう言って、彼の横をすり抜けようとする。
「待ってよ、奈々に伝えたいことがあるんだ」
真剣そうな声に、思わず立ち止まってしまう。
だけど……。
「私は光希から聞きたいことなんてない」
これでいい。私はもう、彼とは他人同士なのだから。
「そんなこと言わないでよ。俺、ちゃんと伝えるまで……」
「もうやめてよ!」
思わず叫んでしまった。
感情の整理がつかない。
3年も前に別れた彼が、職場まで押しかけてきて今更何を伝えるというのだろう。
もう私たちはどうしたって恋人には戻れない。
復縁したとてまた同じことの繰り返しだって、2人ともわかっているはずだ。
好きの気持ちだけでは、もうどうにもならないのだ。
それに……。
そもそも彼は、光希は……。
……3年前、別れを告げたあの日、交通事故で亡くなっているのに。
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