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いつもの学校。いつもの教室が、いつもとちがったように見える。先生がチョークで黒板に字を書くときのコツコツとした音も、クラスのみんなの小さな息づかいも、うすっぺらく聞こえた。
いったい何が起きているのだろう。考えこんでいると背中をつつかれた。ミユだ。
「何、ぼーっとしてるの。だいじょうぶ?」
私が、「だいじょうぶ。何でもない」と答えるとミユは、「そう?」と言って前を向き直った。
そのすぐ後、ユージが「先生」と言って手をあげた。
「何ですか?」と先生が訊くと、ユージは、「トイレ、行ってきます」と答えて教室を出て行った。
違和感は彼の死から来ているにちがいない。でも、これから起きる彼の死について、予測がつかないのはなぜだろう。
これまでは、予感した死の始まりから終わりまで全てを見通せたはずなのに、今回は見通すことができないのだ。
しばらくしてユージが席にもどったけれど、違和感は消えるどころか、どんどんふくらんでいった。
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