第十章

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…………  耳の裏側(うらがわ)で、弓の(つる)(はじ)けるような音がした。  祭りの()()らされて、空が光っている。その深い色から、西空の奥に雲が立っていた。 「来るわ!」  私が(さけ)ぶと同時(どうじ)に、南西から赤いものが飛んでくる。(やいば)のような(つぶて)だ。 「アヤノ! (あぶ)ない!」  私がさけぶと、アヤノが身を()せた。 「何だ?」と身を乗り出したショウタの右の(ほお)を、一筋(ひとすじ)の風が切り()いた。細い血が飛び()る。ショウタが体をのけぞらせた。 「ショウタ!」  アヤノが、ショウタを(かば)おうとその体におおいかぶさる。  リュウタロウは、(いきお)いよく山車(だし)()け上がるとショウタの様子をみた。 「大丈夫(だいじょうぶ)、かすり(きず)だ」とリュウタロウが言う。  ショウタは、二の(うで)(ほお)をぬぐうと、血が出ていることに気がついた。 「おい。だれがやった!」とショウタが怒鳴(どな)った。 「やつだ」とリュウタロウが言う。 「やつって(だれ)だ?」とショウタが()くと、リュウタロウが、「バケモノだ」と答えた。 .
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