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…………
耳の裏側で、弓の弦が弾けるような音がした。
祭りの灯に照らされて、空が光っている。その深い色から、西空の奥に雲が立っていた。
「来るわ!」
私が叫ぶと同時に、南西から赤いものが飛んでくる。刃のような礫だ。
「アヤノ! 危ない!」
私がさけぶと、アヤノが身を伏せた。
「何だ?」と身を乗り出したショウタの右の頬を、一筋の風が切り裂いた。細い血が飛び散る。ショウタが体をのけぞらせた。
「ショウタ!」
アヤノが、ショウタを庇おうとその体におおいかぶさる。
リュウタロウは、勢いよく山車に駆け上がるとショウタの様子をみた。
「大丈夫、かすり傷だ」とリュウタロウが言う。
ショウタは、二の腕で頬をぬぐうと、血が出ていることに気がついた。
「おい。だれがやった!」とショウタが怒鳴った。
「やつだ」とリュウタロウが言う。
「やつって誰だ?」とショウタが訊くと、リュウタロウが、「バケモノだ」と答えた。
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