第十章

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「アヤノ。力鉾(ちからぼこ)から(はな)れるな!」とリュウタロウが叫んだ。  アヤノはショウタと距離(きょり)をおき、背中を力鉾(ちからぼこ)に押しつけた。アヤノの顔が引きつっている。  山車(だし)を引く町衆(まちしゅう)も、異変(いへん)に気づいたのだろう。どよめきが上がり山車(だし)を引く手を止めた。 「引け! みんな引け! 山車(だし)を止めるな!」  リュウタロウが(さけ)んだ。一刻(いっこく)も早く神社の境内(けいだい)山車(だし)を入れたい。早く赤い鳥居(とりい)をくぐりたい。私もそう思う。 「でも、その子の手当てを」と町衆(まちしゅう)の一人が言って手をのばした。 「この子は大丈夫だから山車(だし)を引け! 鳥居(とりい)をくぐれ!」  リュウタロウが必死(ひっし)(さけ)ぶ。 「……鳥居(とりい)をくぐれ!……」  五年B組のみんなも叫んだ。  しかし、私のこめかみはさらに強くと痛み出す。 「また来るわ!」  私が言い終わらないうちに、再び赤い(つぶて)が飛んできてアヤノの足元の(わら)()き、火の手が上がった。  リュウタロウとショウタが、足で火を()み消す。 .
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