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「アヤノ。力鉾から離れるな!」とリュウタロウが叫んだ。
アヤノはショウタと距離をおき、背中を力鉾に押しつけた。アヤノの顔が引きつっている。
山車を引く町衆も、異変に気づいたのだろう。どよめきが上がり山車を引く手を止めた。
「引け! みんな引け! 山車を止めるな!」
リュウタロウが叫んだ。一刻も早く神社の境内に山車を入れたい。早く赤い鳥居をくぐりたい。私もそう思う。
「でも、その子の手当てを」と町衆の一人が言って手をのばした。
「この子は大丈夫だから山車を引け! 鳥居をくぐれ!」
リュウタロウが必死に叫ぶ。
「……鳥居をくぐれ!……」
五年B組のみんなも叫んだ。
しかし、私のこめかみはさらに強くと痛み出す。
「また来るわ!」
私が言い終わらないうちに、再び赤い礫が飛んできてアヤノの足元の藁を焼き、火の手が上がった。
リュウタロウとショウタが、足で火を踏み消す。
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