第十章

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 しかし、すぐに次の(つぶて)山車(だし)に当たり、別の場所から火の手が上がった。  あわてて、山車(だし)に乗っている町衆(まちしゅう)が火を消し止める。しかし間髪(かんぱつ)を入れず、いくつもの赤い(つぶて)山車(だし)(つらぬ)いた。 「早く山車(だし)を引いて! 鳥居(とりい)をくぐって!」  私も必死(ひっし)で声を上げる。  止まっていた山車(だし)が、ふたたび動き出した。みんなが力を込めて山車(だし)を引き始める。  木でできた大きな車輪(しゃりん)路面(ろめん)(こす)れ合い、(けむり)を上げた。大通りぞいの人々も、あわてて道を開ける。  力鉾(ちからぼこ)の先が大きく()れた。大通りの両側(りょうがわ)(かざ)られている大きな七夕飾(たなばたかざ)りが風にもまれている。辺りに強風(きょうふう)()き始めた。  鳥居(とりい)まであと少しだ。  私は「アヤノを守って」と、力鉾(ちからぼこ)に強く(ねが)った。 .
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