第十章

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力鉾(ちからぼこ)を引け」と町頭(まちがしら)が言う。力鉾(ちからぼこ)の先に着けられた(つな)が、後ろに向かって引っぱられた。力鉾(ちからぼこ)がしなるように曲がる。(たけ)を低くし、鳥居(とりい)をくぐらせるのだ。 「もっと引け!」  ぎりぎりと音を立て、力鉾(ちからぼこ)(ゆみ)のように引きしぼられる。その間にも、火の(つぶて)山車(だし)(おそ)った。 しばらくして、「力鉾(ちからぼこ)を立てろ!」という町頭(まちがしら)の声がひびいた。  私の(ねが)いが通じたのだろうか。アヤノを乗せた山車(だし)鳥居(とりい)をくぐりぬける。すると、火の(つぶて)がぴたりと止んだ。  山車(だし)は、神社の拝殿(はいでん)の前まで引きこまれた。 「山車(だし)が、連発花火(れんぱつはなび)(ねら)われました」  町頭(まちがしら)が、神社の人に報告(ほうこく)している。 「それは(あぶ)なかったですね。すぐに警察(けいさつ)連絡(れんらく)しましょう」  神社の人は、そう言うと、鳥居(とりい)(わき)にいる警察官(けいさつかん)を呼んだ。 「ちがいます。花火(はなび)じゃありません! ショウタが(ほお)を切る怪我(けが)をしたんですよ。花火で(ほお)が切れますか?」  ミユが大声で反論(はんろん)する。 「これは花火じゃない。宮司(ぐうじ)さんを()んでいただけませんか?」  リュウタロウも大声で(うった)えた。しかし立ち会った神社の人も、警察官(けいさつかん)も、私たちの話を聞き入れてくれない。  しばらくすると、二人の警察官(けいさつかん)山車(だし)の前までやってきて言った。 「警備(けいび)の数を()やし、このようないたずらが起きないように見張(みは)ります。あとは私たちにまかせて、川への押し出しまで、祭りを続けてください」  今起きていることは、容易(たやす)いことではない。このまま祭りを続けても大丈夫(だいじょうぶ)なのだろうか。私は、とても不安(ふあん)になった。 .
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