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「私、自信ありません。龍に乗り始めて、まだ短いんです」と私が言うと、里織部が言った。
「あなたのお気持ち、よく分かります。じつは、三十年くらい前にも、似たようなことがありましてね、そのときに私、鵺と戦ったんです。正確に言えば私たちです。あのときは、龍が二匹、龍使いが二人いましたから。私も、とても怖かったですよ。あなたと同じです」
「もう一人の龍使いって、平野正成さんじゃないですか?」と、リュウタロウが訊いた。私は、突然父の名前が出たので、おどろいた。
「その通りです。どうして知っていらっしゃるのですか?」と、里織部が訊き返す。
「正成は、私の父です」、そう私は言った。
それを聞いた里織部が、目を丸くして驚いた。
「あなたが娘さんですか。あなたのお父さんは、すばらしい龍使いでした。三十年前の戦いに、私たちが勝つことができたのは、正成さんがいてくださったおかげです」
「そのときのことを、教えていただけませんか?」とリュウタロウが言った。
里織部は「いいでしょう」と答えると、そのときのことを話し始めた。
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