第一章

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 そのころ祖父(そふ)末期(まっき)の胃がんで、医者から『もって一週間でしょう』と言われていた。  ある日の夜、私は息苦(いきぐる)しさを感じ目をさました。同時に、祖父が死にかけていることを感じ取る。私は()ている母をむりやり起こし、病院に電話をかけさせた。祖父の病室を確認した医師から、家族そろってすぐに来るように言われた。  死に目にはぎりぎり間に合ったけれど、祖父(そふ)はそのまま息を引き取った。 「イヨには不思議(ふしぎ)能力(のうりょく)があるみたいね」  葬式(そうしき)が終わってから、母がぼそりと言ったことを今でも(おぼ)えている。  ◇◇◇ 「イヨ! 話、聞いてる?」 「え、何お母さん」 「だから、明日、ミユちゃんちに泊まりに行くんでしょ?」 「うん」 「じゃあ電話かけておくわね」  私は「はーい」と返事をした。 .
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