第一章

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 ◇◇◇  次の日も、空は晴れ(わた)っていた。  私は歩いて学校に向かう。学校までは家から十分くらいだ。  歩くのは気持ちがいい。自転車に乗っていては気づかない小さな自然の変化に気づくことができるから。  初夏なら、木の葉が黄緑(きみどり)色から深緑(ふかみどり)色に変わっていくようすや、春の草花が()れイネ科の植物と入れかわってくるようすがよく分かる。そのような自然の変化は、グラデーションのようにゆっくりと、でも着実(ちゃくじつ)に進んでいて、私の心を(なご)ませてくれた。  この登校の十分間は、私にとって家と学校との切りかえをするための大切な時間だ。心のもち方というのは大事(だいじ)で、少しくるっただけでも一日のスタートにつまずいてしまう。ときには夕方までずっとうまくいかないことだってある。  今日は、うまくいきそうだったけれど……。  校門まであと少しと言うところで、「イヨ! 大変!」と大声をかけられた。ミユだ。何だろうと思い、フェンス()しに学校の中を見ると、赤いランプが回っているのが見えた。 .
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