一話 黒髪の少年と銀髪の少女

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一話 黒髪の少年と銀髪の少女

 暁闇の中で、森の一角の空間が揺らいだ。  球体が浮かび上がり、大きさを増していく。  鳥達が森の変化に驚き、一斉に羽ばたいた。  球体は接地した瞬間に消え、少年少女が姿を現す。周りを見渡した銀髪の少女、レラがポニーテールをふるり、と揺らしながら少年に話しかけた。 ● 「ユウ、今回は何故呼ばれた? 何を為す?」  ユウと呼ばれた黒髪の少年は瞳を伏せる。 「んー、『星の意思』を通して原因の始まりから見てきたんだけど」 「ふむ」 「この星、『エラン』の環境を整えている『神樹』に目をつけた国があって、囲い込んで力をここ数十年吸い上げ続けたみたい。その結果、星が悲鳴を上げたんだ」  眉をひそめ、首を傾げるレラ。 「……数十年で揺らぐ星など、どうにもならないだろう。そんな星の声が何故届いた?」  ユウと行動を共にし、星々を巡ってきたレラ。そんな二人が、寿命の近い星から呼ばれた事は一度もないのだ。    突発的な事象に星がダメージを受け、ユウとレラがその星に降り立つという事がほとんどなのである。  そこにユウが、言葉を継いだ。   「本当はね、星の命は十分にあった。だけど」  指を一つずつ折り曲げながら、レラに説明する。    神樹からの搾取による国力の向上。  効率的な搾取手段の開発。  計画性のない搾取により、漏れ出る力。  周辺の生物の変異。  神樹を目指す生物と国との神樹の奪い合い。  更なる搾取による対抗手段の開発…… 「ユウ」  言葉の途中で、レラが言葉を挟んだ。  くるぅ。 「私にひもじい思いをさせるな」 「あ、はい。飽きてお腹減ったんだね」 ●  " 風と大地の惑星(ウィンディア) フェルネ "  ユウが呟いた瞬間銀毛の仔狼が傍に出現した。 「フェルネ。周りを見ててもらえるかな? 後で美味しいお肉あげるから」 『わふ!』  お座りから尻尾を盛大に振ったフェルネは、ユウに前足を差し出した。 「あはは、はいお手」  ぽん。  フェルネは差し出した手に片足を乗せた。   「いい子だね」 「おい、フェルネ。お手」  レラがしゃがみ、片手を差し出した。  ぽふ。  フェルネはレラの頭にお手をする。 「……もう一度だけチャンスをやる。お手」  ぽし。  今度はその鼻にお手が乗る。レラの顔が真っ赤に染まり、その手元に身長を遥かに超える大鎌が出現した。 「喜べ。貴様の命日は今日だ」  ふんっ!  フェルネはソッポを向いた。 「そこを動くな貴様ああぁぁ!」 『わおーん! わうわうわうわうっ!』  駆け出すフェルネを、大鎌を構えたままレラが追う。ユウはくすくすと笑いながら、食事の準備に取りかかった。 ●  ユウは、レラと『星の子』達っていつもあんな感じだよね……などと思いつつも、イベントリ(無限収納)からテーブルや椅子、食材を取り出していると。 (声……?)  男の大声と子供達の泣き声が聞こえてきた。  ユウがその方角を見ていると、泣きながらヨタヨタと逃げ惑う子供達と、追い立てる男が見えた。その後ろで大型の獣が木をなぎ倒している。  高価そうな商人服を着た男の叫びが聞こえた。 「この獣畜生! こっち来んじゃねぇよ!」 (獣に追われている奴隷商と奴隷の子供達、か。レラとフェルネはどこまで行ったんだろう?)  " レラ、フェルネ。戻ってきて "  男の過去がユウは一人と一匹に語りかけ様子を窺った。
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