7人が本棚に入れています
本棚に追加
一話 黒髪の少年と銀髪の少女
暁闇の中で、森の一角の空間が揺らいだ。
球体が浮かび上がり、大きさを増していく。
鳥達が森の変化に驚き、一斉に羽ばたいた。
球体は接地した瞬間に消え、少年少女が姿を現す。周りを見渡した銀髪の少女、レラがポニーテールをふるり、と揺らしながら少年に話しかけた。
●
「ユウ、今回は何故呼ばれた? 何を為す?」
ユウと呼ばれた黒髪の少年は瞳を伏せる。
「んー、『星の意思』を通して原因の始まりから見てきたんだけど」
「ふむ」
「この星、『エラン』の環境を整えている『神樹』に目をつけた国があって、囲い込んで力をここ数十年吸い上げ続けたみたい。その結果、星が悲鳴を上げたんだ」
眉をひそめ、首を傾げるレラ。
「……数十年で揺らぐ星など、どうにもならないだろう。そんな星の声が何故届いた?」
ユウと行動を共にし、星々を巡ってきたレラ。そんな二人が、寿命の近い星から呼ばれた事は一度もないのだ。
突発的な事象に星がダメージを受け、ユウとレラがその星に降り立つという事がほとんどなのである。
そこにユウが、言葉を継いだ。
「本当はね、星の命は十分にあった。だけど」
指を一つずつ折り曲げながら、レラに説明する。
神樹からの搾取による国力の向上。
効率的な搾取手段の開発。
計画性のない搾取により、漏れ出る力。
周辺の生物の変異。
神樹を目指す生物と国との神樹の奪い合い。
更なる搾取による対抗手段の開発……
「ユウ」
言葉の途中で、レラが言葉を挟んだ。
くるぅ。
「私にひもじい思いをさせるな」
「あ、はい。飽きてお腹減ったんだね」
●
" 風と大地の惑星 フェルネ "
ユウが呟いた瞬間銀毛の仔狼が傍に出現した。
「フェルネ。周りを見ててもらえるかな? 後で美味しいお肉あげるから」
『わふ!』
お座りから尻尾を盛大に振ったフェルネは、ユウに前足を差し出した。
「あはは、はいお手」
ぽん。
フェルネは差し出した手に片足を乗せた。
「いい子だね」
「おい、フェルネ。お手」
レラがしゃがみ、片手を差し出した。
ぽふ。
フェルネはレラの頭にお手をする。
「……もう一度だけチャンスをやる。お手」
ぽし。
今度はその鼻にお手が乗る。レラの顔が真っ赤に染まり、その手元に身長を遥かに超える大鎌が出現した。
「喜べ。貴様の命日は今日だ」
ふんっ!
フェルネはソッポを向いた。
「そこを動くな貴様ああぁぁ!」
『わおーん! わうわうわうわうっ!』
駆け出すフェルネを、大鎌を構えたままレラが追う。ユウはくすくすと笑いながら、食事の準備に取りかかった。
●
ユウは、レラと『星の子』達っていつもあんな感じだよね……などと思いつつも、イベントリからテーブルや椅子、食材を取り出していると。
(声……?)
男の大声と子供達の泣き声が聞こえてきた。
ユウがその方角を見ていると、泣きながらヨタヨタと逃げ惑う子供達と、追い立てる男が見えた。その後ろで大型の獣が木をなぎ倒している。
高価そうな商人服を着た男の叫びが聞こえた。
「この獣畜生! こっち来んじゃねぇよ!」
(獣に追われている奴隷商と奴隷の子供達、か。レラとフェルネはどこまで行ったんだろう?)
" レラ、フェルネ。戻ってきて "
男の過去が見えているユウは一人と一匹に語りかけ様子を窺った。
最初のコメントを投稿しよう!