彼女のダチュラのヘアミスト

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でも、 「いいですよ。今日は定時で上がれそうなので。」 苦手だったくせに少し面白くなり、その分かりきった嘘に乗っかってみることにした。 そう、いつもなら視線を合わせないようにしていたがわざとしっかりと視線を合わせて、じっくりと、さっきみたいな貼り付けたものではなく自然といつもよりもやや赤い口元から笑みが出た。 まさか承諾されると思っていなかったのか、心底吃驚した表情をする神取先生を横目に事務室に戻る準備を終え、 「では、失礼致します。」 と、口調も仕草も戻し、検査室を後にした。 彼女のダチュラのヘアミスト しっかりと視線を合わせて、恐らく素なのだろう。俺のお粗末でボロボロな提案にOKを出した時の満園さんの顔と笑みに恐ろしいぐらい惹かれるものがあった。 さっきまで間近にいたから感じた上品な花の香りは今は中毒性を感じるように‘‘もう一度近くに来て欲しい’’と感じてしまうほどだった。 ただ目があっただけでこんなに乱されることなんて初めてだ。 近くにあった椅子にどかりと座り癖で髪を触った。 なんだろうか、この気持ちは? コバナシ、 ダチュラ(朝鮮朝顔)の花言葉は「偽りの魅力」「夢の中」「愛嬌」「あなたを酔わせる」です。 さぁ、このあとはどっちに進むのでしょうね。
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