彼女のダチュラのヘアミスト

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「以上です、有難うございました。」 「こちらこそ1から有難うございました。」 「いえ、こちらも初めて記入させると知らずにすいません。」 検査本を閉じ、事務室に戻る準備をしていると声をかけられた。 「どうかされましたか?」 「あ、いや、ただの興味で聞くのですが……、」 「なんでしょうか?」 そんなに興味を引かれるようなことをしただろうか? 「なんで眼鏡なんですか?」 「嗚呼、」 成る程、たまに聞かれるけど久々かも。 「単純に手入れが面倒なのと他だと手が届かないブランド物でも案外手に届く値段のものも多いし毎日のものだと思うと罪悪感なく買えるし、偶然でも目が合うと気まずい時あるじゃないですか、そうならないためです。」 完全に陰キャ的発想、視線が怖いわけではないけど視線が合って因縁付けられるの怖い。 こんなこと聞かれると思っていなかったから表情に出ない程度に驚いた。 「では、失礼します。」と言って退室しようとしたら、 「あの、」 「はい?」 「今度眼鏡買いに行こうと思っているので、良かったらどんなの選んだらいいか分からないのでこのあと空いてますか?」 「…、」 嘘、そう直感ですぐに分かった。 でもなんでそんな嘘をつく必要があるのかは分からない。
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