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第一章 ゴールデンコンビ解散!
細雪がちらつく師走の末、僧侶も医者も教師も走らずに来たる新年度を心待ちにして暖かい部屋の中で温々としていた。
しかし、ここ名古屋フットボールスタジアムでは少年達が師走を子走と変えん勢いで縦横無尽に芝生の上を走り回っていた。
今日はJrサッカークラブ大会東海地区の決勝戦の開催日、決勝にコマを進めたJrチーム同士がしのぎを削り合う死闘を繰り広げていた。
その二チームであるが、まずひとつはサッカー王国静岡県のトップサッカークラブである「峰不二FC」静岡に点在するプロサッカーチームのJrチームを次々と破った本物の強豪である。サッカー王国静岡のJrチームの殆どは他都府県であれば余裕で優勝を成し遂げる程の猛者達。その猛者達よりも遥かに強いのがこの峰不二FCである。
もうひとつは愛知県のサッカークラブである「名古屋サカマタエイトJr」名古屋に存在するプロサッカーチームのJrであるために強豪ではあるのだが、ここ数年は他のサッカーチームに負け続けており低迷の時を過ごしていた。
しかし、二人の才能ある選手が入団したことにより、活気を取り戻し久々の決勝戦にまでコマを進めたのである。
東海地区決勝戦は前半が終わってもスコアレス。後半が始まっても両チーム共に点の決め手を掴むことが出来ずに、お互いに手(足)を拱くばかり。
名古屋フットボールスタジアムのキャパシティは3万人、小学生同士の試合であっても満員御礼で立錐の余地もない。観客達はスコアレスの攻防を固唾を飲んで見守るのであった。
試合は残り5分を迎えた。ロスタイムを含めても残りは7分程。この7分で勝利への突破口を開かねばならない。
先に動いたのは名古屋サカマタエイトJrのキャプテン、朝倉仁(あさくら ひとし)であった。峰不二FCは鉄壁のディフェンスを誇り、あまり積極的に攻めてくることはない。11人全員がDFと言わんばかりの守りのチームである。
仁はこれまで敵陣に切り込み何本もシュートを打ち込んでいるが、FWにしてエースストライカーである仁を警戒しているのか、仁一人に5人がマークし、徹底的にシュートを封じ込めに来ているせいでゴールを決めることが出来ずにいた。仁はこれまでの試合の総得点は36点、勿論得点王。二位の得点取得者とはダブルスコアの差をつけている。
峰不二FCの監督も「朝倉仁一人を封じれば必ず勝てる!」と、イレブンに指示を出してローテーション制で仁のマークをさせていた。仁はこれまでの相手であれば5人6人のマークを簡単に突破しゴールを決めることは出来た。
しかし、今回はディフェンス特化のやりにくい相手達。一人ひとりがこれまでの対戦チームのエース級であるためにディフェンスを破れずにいた。
こうしているうちにもフルタイムで芝生を縦横無尽と駆け巡った仲間達のスタミナはゴリゴリと削られていく。このまま、延長になればこちらのスタミナが切れたところを攻め込まれて終わりだ。そこで閃いたのは「伏兵」に頼ることだった。
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