後ろ側のウルスラ

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 *** 「姉貴!今日こそは俺が勝つからなぁぁぁ!」 「上等っ!返り討ちにしてやんだからねっ!!」  風呂が終わった息子と娘が、ばたばたと階段を駆け上がっていく。小学校低学年の弟と高学年の姉は、何やら最近トレーディングカードゲームにハマっているらしい。食卓の席においても、やれソリティアを邪魔されただの、除外ゾーンから帰ってくるなだの、手札事故は滅べだのよくわからない会話をしている。  夫も好きなカードゲームであるようで(そもそも二人に布教したのが夫だという話だ)、夕食の席で三人揃っていると彼も加わって賑やかにしていることが少なくない。私だけ話がわからなくて少しばかり悔しい。今度教えて貰おうか、なんてことを最近思いつつある。四十代の主婦がやって楽しいものなのかはわからないが。 「二人とも、ゲームは宿題やってからにしなさいよー?それと廊下を走らないの!」  申し訳程度に注意していると、玄関の鍵が開く音がした。夫が帰ってきたのだ。キッチンにいた私はフライパンの火を止めて夫を出迎える。 「お帰りなさい、聖人(まさと)さん。今、ハンバーグあっため直してたところなんだけど……先にお風呂入る?」 「ただいま、(ゆかり)さん。いいや、お腹空いてるし、温かくして待っててくれたなら先に食べるよ」 「わかったわ」  年下の夫はここ最近帰りが遅く、子供達と一緒にご飯が食べられないことが多かった。今日は少しだけマシな時間である。繁忙期は終わったのだろうか。  私がそれとなく尋ねると、なんとかな!と彼は笑った。 「明日からは八時前には帰れると思う。ハンバーグ楽しみだなー」  学生時代から変わらず、子供みたいな笑顔を見せてくれる彼のことが私は大好きだった。  彼と共に作っていく家族もまた。
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