後ろ側のウルスラ

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 *** ――どうしよう、葉書のこと……。  気持ち悪いし、何かあってからでは遅いと知っている。なんせ、もう葉書が来るようになってから半年くらい過ぎているのだ。最初は一週間に一度くらいだったのがいつの間にか毎日になっている。夫や子供達に心配かけまいと黙っていたが、そろそろ限界かもしれない。  夫の仕事が忙しいことを理由に、今日まで相談しないで来たのだが――。 「縁さん、何か悩みでもあったりする?」 「え!?」  夫の食事と一緒に、食卓に座ってお茶を飲んでいた私。目をまんまるにして、どうしてわかったの?と尋ね返せば。 「結婚して何年になると思ってんの。縁さんのことなら、俺はなーんでも知ってるんです。ひょっとして、俺が忙しそうだから遠慮してた?繁忙期もう終わったし、気にしなくていいよ?一人で黙って悩まれてる方が辛いもん」 「聖人さん……」  ここは、お言葉に甘えることにしよう。  私は夜にこっそり捨てる予定だった葉書を引き出しから取り出して、食卓の上に置いた。  そして、そっくりな葉書がここ半年もの間続いていることを話したのである。 「私が夕方にお買い物に行くと、ポストにそれが入ってるの。宛名は私の名前なんだけど、送り主の名前がなくって。それなのに“これからもよろしく”とか言われても、一体何のことだか……」  困惑のまま話をそう締めくくり、私は気づいた。食事をする箸を止めて葉書を睨む聖人さんの目が、どんどん険しくなっていることに。 「ちょっと待ってろ」  彼はそう言うと立ち上がり、リビングを出ると子供達がいる二階へ階段を上がっていった。何をするつもりなのかと思って耳をすませると、“ちょっといいかふたりとも”と呼びかける声が。 「二人ともさ、最近うちに変わった葉書が届いてたりしないか?年賀状じゃないやつ」 「姉貴ちょっとタンマ、効果発動タンマ!……え、なにそれ?知らないけど?」 「私も知らないー。あ、あんたのモンスターそのまま落とし穴ね」 「待てつってんじゃん!もう!!」  どうやら、子供達にバレたくない、という私の気持ちは最低限汲んでくれたらしい。声だけだが、子供達に動揺の気配がないことはわかる。――やはり、あの葉書を子供達がこっそり受け取って隠している、なんてことはなさそうだ。 「話、聞こえてたよな?」  階段を降りて、聖人さんが告げた。 「カマかけてみたけど、二人は本当に葉書については知らないと思う。ってことは、縁が買い物から帰ってきたタイミングでいつも入ってるってことだ」 「そうね。その時に配達が来るのかしら」 「そんなわけない。気づかなかったか?この葉書、消印がないんだぜ。つまり、郵便局を通してない。この家の前まで来て、毎回そのタイミングでポストに入れてる人がいるってことだ」 「え」  想像して、さすがに血の気が引いた。彼は葉書を何度も裏返して確認すると、やっぱりないよ、と繰り返している。
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