初仕事は

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初仕事は

カチャリ……。 キヌコさんが、契約者 東田様の部屋に 入って来た。 キヌコさんは、東田様の部屋全体を  見渡すと、「男性、一人暮らし、 そうね、年齢は二十代位かしら? 年の割には、意外と片付いてる ほうかしらね……」と言った。 キヌコさんがテーブルの上に無造作に 置かれた雑誌を重ねる。 「ん? 何かしら……これ」 とテーブルの上に 置かれた一枚の紙を手にとった。 今日から、仕事をしてもらえる方へ 初回ですので、先ずは、軽く掃除機を かけていただき、ごはんを炊いて、 味噌汁と焼き魚を焼いておいてください。 材料は冷蔵庫に入っています。 宜しくお願いします。 東田 と書かれてあった。 「ふ~ん、先ずはお手並み拝見ってところ  ですか……」と言うとキヌコさんは ニヤリと笑い、冷蔵庫を開けると 食材のチェックをした。 トントントンと具材を切る音が 部屋中に響く。 コトコトコトとご飯の炊ける音も 聴こえる。 キヌコさんは、東田様からの要望、 部屋に掃除機をかけ、食事の準備をした。 テーブルに置かれた、焼き鮭、 そして、伏せたお茶碗とお椀、 手前にはお箸を並べ、 その横に一冊のノートを置くと、 「さあ、今日はこれでおしまいですね」 と呟き部屋を出て行った。 カチャッ……。 誰もいない部屋にドアの閉まる音が響く。
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