お天気雨の奇跡(小説版)

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それからぼくは、たくさん自然の神秘を見た。 博物館にそびえる恐竜の化石、水槽を悠然と泳ぐ大きなノコギリエイ、暗闇に瞬くホタル。 夏の夜、公園で息をひそめて見つめたセミの羽化。 望遠鏡で初めて月のクレーターを見たのも、あのラウンジの窓からだった。 そして、皆既月食。 いつも父はとなりにいて、目を輝かせているぼくの顔を見守っていた。 ぼくが父と同じ道に進み、博士号を取った時、父は心から喜んでくれた。 父が祖父を、祖父が曽祖父を追いかけたように。 今は年老いた父のノートに、こう書いてあった。   虹の空 幼きころの 君想う 620a9e08-2d55-4b74-9be5-5977ca634942
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