お天気雨の奇跡(小説版)

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ぼくたちは、〇〇階に着いた。 そこは居住者の共用施設で、ラウンジになっていた。 父はぼくの手を引いて、窓ぎわのカウンターに座らせた。 窓は東向きで、空には灰色の雲がかかっていた。 「見ていてごらん」 父は、真東からわずかに左、つまりちょっとだけ北の方を指差した。 だが、そこには何にもなかった。 ただ灰色の雲があるだけだった。 そのうち、だんだん空が明るくなってきて、灰色の雲が白く明るくなってきた。 その時、白い雲にうっすら赤っぽい色が見えたような気がした。 ぼんやりとした色はだんだん広がって、黄色や青、紫の帯になっていった。
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