31人が本棚に入れています
本棚に追加
あれから、大友くんはあたしと一緒の夏休み勉強会に参加していることが判明した。だけど、たまに目が合うくらいで、話をしたりはしない。
目が合うのは、あたしがあのてるてる坊主の中に入っていたラブレターを、まだ手元に持っていることに怯えていたから。
大友くんは疑っていないんだろうけれど、いつそれがバレて海に沈められることになってしまうのかと、恐怖でたまに様子をうかがってしまうあたしのせいなんだ。
今日もすでに二回、目が合っている。
勉強会を終えて帰ろうとしたら、いつの間にか外は雨雲が立ち込めて、土砂降りになっていた。
にわか雨であって欲しいと昇降口から空を見上げてみるけれど、一面晴れ間のない淀んだ雲に、止むのはまだまだ先の様な気がした。
教室で時間を潰そうかと、振り向いた時だった。
「これ、貸す」
「……え」
目の前にネイビーの傘を差し出されていて、見上げれば、大友くんが立っていた。
「じゃあな」
「あ、ありがとうっ」
もう一つの傘を開いて、土砂降りの中を歩いていく大友くんの背中を見届けてから、あたしは貸してもらった傘を開いて家まで帰った。
大友くんって……案外いい人……?
借りっぱなしでタダでは返せないと、あたしはキッチンでクッキーを作る。
青空くんと両想いになれたら、作って渡そうと思って買っておいた材料があった。無駄にならずに済んでよかった。
お菓子作りは好きだけど、フラれてしまった後は、もうクッキーなんて作る気力も無かったし。
ラッピングをして、借りた傘と一緒に明日渡そう。
最初のコメントを投稿しよう!