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1、失恋とてるてる坊主
「青空くん、好きです」
空は快晴。ジリジリと刺す様に照りつけてくる太陽が半袖のセーラー服から伸びた腕を焼く。
真夏の炎天下。学校の裏庭と言うベタなシチュエーションで、あたしはずっと想いを寄せていた同じクラスの青空くんに告白していた。
高校二年の夏、明日からは夏休みに入る。その前に、この想いを伝えておきたかった。
この返答次第では、あたしの夏休みが薔薇色にも灰色にもなりうる。できることならば、灰色には、なりたくない。
「……あー、ごめん。俺、川島のことよく分かんないし、それに、好きな人いるんだ」
爽やかな笑顔に、あたしをフルことに微塵も心を痛めていないことが伝わる。
「……あ、そ、そっか、そうなんだ、うん、分かった、ありがと」
「うん、じゃあね」
そりゃそうだ。
青空くんはモテるから。
告白なんて日常茶飯事だろうし、フルのも慣れたものだ。曖昧にされるよりも、全然良い。
だけど……。
──川島のことよく分かんないし──
なんだか、ただフラれるよりも、傷付いた。
去年、同じ委員会になった時から、優しくていつもサポートしてくれて、遅くなった時は一緒に帰ることも何度かあったんだよ。
楽しかったのは、ドキドキしていたのは、あたしだけだったんだ。
なんか、灰色を通り越して、闇。
這い上がれるのかな、あたし。
ボトッ
ガッカリと下を向いた瞬間だった。足元に落ちてきたのは。
「……てるてる……坊主?」
拾い上げてすぐに、頭上を見上げた。眩しい太陽に目を細めると、屋上に下を覗き込む人影。その人と、バッチリ目が合った。
あれは、大友雷くん?
ギッと睨まれた気がして、あたしはすぐに視線を逸らした。
怖い……。
ポツリ。
頬に当たる雨粒にもう一度空を見上げると、天気雨の様で日差しがあるのに、粒の大きな雨が落ちてくる。
てるてる坊主を抱きしめたまま、あたしは急いでその場から逃げ出した。
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