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「それピアスホールだろ?この学校だと、なかなか開けてる奴、見かけないからさ」
(へっ……?そっち??)
長い指が、僕の左耳を指差した。
「俺も両サイ一つずつ。やっぱ開けたくなってくるよな〜。えっと……名前」
本当に僕のことを知らないのか、佐々は気不味そうに微笑んだ。
簡単に口元を覆い尽くす大きな手。
(羨ましいな)
すぐにそこから目を背け、
『柳瀬 秋』
と、手元で見せた。
「なぁ、柳瀬。柳瀬が良かったらさ。これからファミレス行かね?スマホも置いて打った方がお前もラクだろ?」
「!」
驚いた。
そんなこと、これまで一度も言われたことはない。
(なんだこれ)
全身から妙な汗が滲む。心做しか、身体も熱い。
コクコクと、動揺して二回頷いてしまったけど、どうだっていい。
「やったぜ。気の合いそうな友だち。一人ゲット」
ガッツポーズを脇でした佐々の手が、ゆっくりこちらへと近付いてくる。
ぽんっと頭上から熱が伝わる。
「仲良くしようぜ」
目線を僕の位置まで下げてはにかまれ、心臓の辺りへ、何かがグッと押し寄せた。
(胸焼けかな??)
経験したことない鼓動の速さに、頷き返すというより、それを押し込むみたいにして、首を引っ込めた。
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