Episode4 噂

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 聞こえた声の主の元に、目線を寄せる。  間違いない。  いまのは佐々だ。  佐々が言った。曽野坂へ。  曽野坂の眉間に何本か皺が入る。  片腕を机に伸ばし、怠そうにしていた身体を曽野坂が起こした。 「モテるからって、女子に飽きたらず、美形の男子?下半身だらしないとは思わないわけ?」  さすが裏ボス。佐々の眼光が鋭く光る。 「抱ければ満足とか、野生動物か?曽野坂は」  柔らかな口調とは違い、威圧的なオーラのようなものが放たれる。  間に挟まれ身を縮めた。 「はぁ?京みたく、相手選ばない奴にだけは!言われたくないんだけど」 (京……?この二人って知り合いだったのか??) 「ヒトの話をろくに聞かない曽野坂が悪いだろ」  口を尖らせ不満そうな佐々が立ち去って、数分後。 (訊いてもいいのかな……?)  知りたい。  二人は一体、どういう知り合いなのだろうか。  だってあんなにも怒ってる佐々は、初めて見たから。  僕を助けてくれた時でさえ、冷静にかつ迅速に対応してくれたあの佐々が。  誰かと口論するだなんて。 『不良』だと、噂される原因も、もしかしたらその辺りにあるのではないだろうか。 (気になるなぁ……)
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