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高校2年の1学期。期末テストが終わった頃から学校に行きたくなくなった。 (何のために勉強してんだろ?)    父親は単身赴任でヨーロッパにいる。母親は出版社の編集長として忙しい。一人っ子だから喧嘩する相手もいない。  こんな時、兄や姉がいたら相談に乗ってくれるんだろうか。それとも「つまんないこと考えてんじゃない」とか一言言われて、終わりだろうか。  弟や妹がいたらどうなのだろう。兄貴として、格好悪い姿は見せられないとなんとか頑張るんだろうか。それとも……。  高1までは取り敢えず親(母親の方だが)の「勉強して、いい大学へ入らないと駄目よ!」に従って来た。なんとか都内の進学校に潜り込んだものの、勉強の虫みたいな周りを見てると、よくこんな面白くないことにそこまで頑張れるなと引いてしまう。  ぼくの少年時代の記憶は塾とファーストフードにまみれてる。小学校、中学校と友だちはいたが、習い事が多すぎてあまり遊べなかったのが哀しい。  そして、高校に入り1年間酷い成績を取り続け、母親にガミガミ言われ続けた。  母親は自分の出た某私立大へ何としても入れと言う。  一方の父親はたまに帰って来て、 「大学は人生を学びに行くところだ。別にママの言うとおりになんてしなくていいんだ」などと耳打ちする。  この両親の意見が全く違うところも、小さい頃からの悩みの種だ。  友だちとの楽しい思い出と引き換えに塾通いしたおかげか、もともと賢いのか、勉強は結構できた。本気出せばそこそこ大学入試はいけるだろうと思ってる。だけど、母親の言うとおりにはしたくなかった。そもそも何になりたいのか、未だ自分にはわからない。  母親のようにも父親のようにもなりたくはなかった。身近に見本がなければ、色んな遊びを通して様々なことに興味を持ち、やりたいことが次第に見つかっていく、そんなもんじゃないだろうか。  つまり、考え方で言えば父親の方が好きだった。  そんな折、一人暮らしの沖縄のおばあちゃんが足の骨を折ったと連絡があった。父方のおばあちゃんだ。  父親は退職したらいずれ沖縄に戻ると言っている。東京生まれの母親は行かないと言う。 「それって熟年離婚するってこと?」 「いや、遠く離れて暮らすってことさ」  この親たちの考えにはついていけない。  ぼくは……そう、きっとそろそろ将来のことを考えないと、いずれどこかで行き詰まると思ってる。 (親はあてにならない。このままこの二人について行くと、自分の人生終わってしまう)  そんな考えが頭をよぎる。  
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