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「渚くーん。おはよー」  今朝も海の家に早速やってくる2人。海の家の常連? 知り合い? 下手すると親戚? そんなふうに他のお客さんからは見えてると思う。 「昨日はありがとうね」 「いえ、こちらこそ、おばあちゃんのお見舞いに来てもらって。おばあちゃん、凄く喜んだんですよ」 「えっ、それは良かった! 私たち、なんか押しかけて、ご飯頂いて、みんなで昼寝して……」 「昼寝はあんただけでしょ」 「健とおばあちゃんも寝たって!」 と真顔で否定するところが面白い。 「寝顔可愛らしかったですね」  ちょっとそんなことを言ってみた。 「いやだなぁ、渚くんに見られてたなんて」 「そうね、よだれも出てて可愛かった」 「それだけリラックスできたのよ。おばあちゃんの家」  そんなふうに言ってもらえると嬉しい。 「わたしんちは根っから北千住だから、ふるさとのある人が羨ましいの」  そうか、自分は沖縄(ふるさと)があるから幸せなんだ。  仕事に戻る。 「何にします? アイスコーヒー?」 「そう思ってたのよ」  彼女たちと出会って4日目。もう随分前からの知り合いみたいに思える。  いつまでこっちにいるんだろう。ちょっと気になって来た。  アイスコーヒーを作りながら、ふと思う。 「はい、アイスコーヒー2つです」 「ありがとう」    コースターを置きながら、二人に聞いてみた。 「お二人はいつまでこっちにいるんですか?」 「う~ん、予定では明後日のお昼過ぎまで」 「ゆったりしてますね」 「大学生だからね」 (明後日か……) 「ねえ、渚くん。今日の午後ね、シュノーケルしたいの」 「いいですよ」 「その辺のビーチじゃなくて、ボートでポイントまで連れてってくれるやつ」 「有料になりますよ。でも健がまたサービスしてくれるかな」 「してくれる、してくれる!」 「取りあえず言っときます」 「うん、お願い」  再びカウンターの方へ歩いていく。 (あっ、今日天気崩れるようなことラジオで言ってたけど、大丈夫かな?)  暖簾越しに見える空は真っ青。 (ま、大丈夫か)  お盆を置いて、健に伝えに行く。
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