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お昼過ぎ、予定通りまたお店に来た二人。
「お昼ご飯食べますか?」
「うん」
「何にします?」
「カレー2つ」
「あー、昨日のゴーヤチャンプルー、美味しかったなぁ」
「あっ、それもばあちゃん喜んでましたよ」
「一生忘れられないな」
「そこまで?」
「だって、食べ物の記憶って、どこでどんな人たちとどう食べたか、って言うのがやっぱり大事じゃない。いや、絶対忘れない」
「そうね、みんなの記憶ね」
カウンターに向かって歩く。
翔子さんの「みんなの記憶」って言葉が嬉しかった。
(この後、「みんな」はどうなるのかな……)
「はい、カレーどうぞ」
「ありがと」
海の家の定番、カレー、ラーメン、氷、アイスコーヒー。
どれも海で食べると普段の数倍美味しいのは、何故だろう。
カレーを食べると、いよいよシュノーケルの時間だ。シュノーケルの場合、健がボートを出して、ポイントまで連れて行く。
「渚、道具を頼む」
「わかりました」
「あ、お前も来てくれよ」
「了解です」
ここ数日で、なんだか健がほんとの兄貴のように思えて来た。
自然に焼けた肌も、以前は全く興味なかったのに、最近ちょっと眩しく見える。
ボートで沖の小島まで行く。船で10分。
エンジンがかかるとボートは小気味よく揺れ、船尾の海中に無数の泡が湧き立った。
一昨日、きゃあきゃあ言いながらバナナボートで走り回ったリーフの中を、今日ボートから落ち着いて眺めてみる。
なんだか一段と綺麗だ。
リーフの中はどこまで行っても海の底がよく見えた。
「一昨日は景色なんてゆっくり見てる余裕なかったと思うけど、とってもきれいでしょ。珊瑚に守られた内海がリーフ。白波が立ってるあそこからが外洋」
添乗員らしく二人に説明してみた。
「あそこから急に深くなるの?」
「まぁ、そうですね」
「そう考えると、ちょっと怖いね」
「大丈夫ですよ」
リーフは魚の楽園だが、人間にとっても天国だ。
まるでカレンダーにしたくなるような眺め。その写真の中に今ぼくたちはいる。
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