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健がたばこをふかしながら説明する。
「大体、あのあたりからあのあたりまでが珊瑚のポイントね。あっ、珊瑚には触らないで。5時くらいになったら迎えにくるから、いいね。疲れたら無理せずに浜に上がって水分や塩分補給して。困ったことがあったら渚に言って」
里沙さん、翔子さんとも、ジャケット、シュノーケル、水中眼鏡、セット完了。
ボート横のスチールの梯子を使って、一人ずつ海の中に下りてもらう。
「うわぁー、やっぱり気持ちいいー!」
火照った体に丁度いい水温。
「最高!」
健が尋ねる。
「二人ともOKー?」
「OK!」
早速、海の中を覗き始めた彼女らを確認し、健がぼくに言った。
「渚、彼女たちの様子はずっと見ててあげて。何かあったら無線で連絡してくれ」
そう言うと防水無線をぼくに渡した。
こんな時の真顔の健は、ちょっとかっこいい。
「了解」
自分もジャケットを羽織って、無線をポケットにしまい、水中眼鏡とシュノーケルをセットする。
それにしても最高の気温、最高の景色。
後ろを向いて、梯子を一段ずつ下りていく。
(あぁ、この感じ……)
一段下りる度、胸の鼓動が一段高鳴る。
混じり気のない透き通る水に、包み込まれる体。
(今日も優しく迎えてくれるんだな)
懐かしい場所に戻っていくような感覚。
何か遠い記憶が甦るような……。
首まで浸かった時、健が言った。
「じゃ、頼んだぞ、渚」
太陽を背に、ちょっと笑って健は言った。
こくんと頷いて、ぼくはボートから離れる。
程なくボートにエンジンがかかり、健はビーチに戻って行った。
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