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16
久々のシュノーケル。何年振りだろう。
軽く海の中を覗いてみると、鮮やかな珊瑚の周りでこれまた鮮やかな魚たちが泳いでいる。
(熱帯魚ってどうしてこんなに優雅に進化したんだろう)
シュノーケルを空に突き立て海の世界を覗いていると、世の中の余計なことなど忘れてしまう。
(何がどう組み合わさったら、こんな美しい世界が出来上がるのか)
時間を忘れてしまいそうになる。
(あっ、彼女たち、大丈夫かな?)
そう思って顔を上げると、里沙さんは結構豪快に動き回っている。
(ブッ、ここをプールと間違えてるよ)
綺麗なのに、何故だか笑える人。
憎めないキャラ。
(きっと、友だち多いだろうな、あの人)
翔子さんを探すと……、静かにシュノーケリングの最中。
普通はこうだ。
二人の位置を常に確認しながら、暫くぼくも海の上で浮いていた。
1時間ほど経った頃、嫌な予報が当たった。
徐々に曇りがちとなり、風が出てきた。
「ねぇ! なんか、天気悪くなってきたねー」
里沙さんがこっちを向いて叫んだ。
「ですねー」
外洋の向こうの方にどす黒い雲が見える。あれは明らかに雨を降らせてる。
(まずいな……)
そう思ったぼくは二人に声をかけた。
「ちょっと上がりましょうか!」
砂浜に上がり、ぼくは無線のコールを鳴らす。
「おー、渚か。ちょっと天気がやばいな。やばいんだけど、もっとやばいことにボートが調子悪いんだ。これからジェットで一人ずつ連れて帰るから、海から上がって待っててくれ」
「了解」
ぼくは海から上がって来た二人に言った。
「これから迎えに来るって。ただ、ボートの調子が悪いんでジェットで一人ずつ運ぶって言ってます」
「そう」
「なんか、急に波が高くなってきたわね……」
「山の天気は変わりやすい」と言うけれど、海も「さっきまであんなに穏やかだったのに」ということはよくある。特に風が出るとやばい。
波はみるみる荒れてきた。
(まずい……)
これじゃぁ、3往復してる間にどんどん状況が悪くなる。
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