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17
暫くすると、健のジェットが波を乗り越え乗り越えやって来た。
「最初、誰から行くー?」
健が叫んだ。
「翔子、行きなよ。陸上部だし」
「陸上部って、関係あるの?」
「こっちの二人は水慣れしてるから」
里沙さんがいつもの調子で言う。
「……そう。悪いわね……」
そう言うと、翔子さんはジェットのところまで行き、健に引き上げてもらった。
「翔子、あんまり泳ぎ得意じゃないのよね」
ぽつりと里沙さんが言った。
「えっ、そうなんですか」
それはまずます最初で正解だと思った。こんな波の上をジェットで帰るのは怖いに違いない。波が高い分、往復の時間は1.5倍くらいかかるだろうし。
(泳ぎが苦手には見えなかったけど、本ばかり読んでたのはそういうことか……)
消えていく健と翔子さんを見てると、里沙さんが言った。
「ねぇ、渚くん」
「はい」
「私たちのこと、どう思ってるの?」
「どうって……、綺麗な人たちだな、と」
「そうだね。よく言われる」
まんざらでもない顔をして言う。
「他には?」
「面白い人だな、と」
「それは私だけでしょ!」
「そうかも」
ちょっと怒られる。
「翔子は?」
何が聞きたいのかなぁと思ったが、
「うーん。素敵な人だと思います」
「まあ、そうだよね。なかなかあんないい女いないもんね」
里沙さんの質問の意図を測りかねたが、それ以上聞かれず、話は終わった。
波は更に高くなり、流石にはしゃぐ気にはなれなかったが、暗くなっても仕方ないので、その後も他愛のない話をぼくらは続けた。
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