17

1/1
前へ
/35ページ
次へ

17

 暫くすると、健のジェットが波を乗り越え乗り越えやって来た。 「最初、誰から行くー?」  健が叫んだ。 「翔子、行きなよ。陸上部だし」 「陸上部って、関係あるの?」 「こっちの二人は水慣れしてるから」  里沙さんがいつもの調子で言う。 「……そう。悪いわね……」  そう言うと、翔子さんはジェットのところまで行き、健に引き上げてもらった。 「翔子、あんまり泳ぎ得意じゃないのよね」    ぽつりと里沙さんが言った。 「えっ、そうなんですか」  それはまずます最初で正解だと思った。こんな波の上をジェットで帰るのは怖いに違いない。波が高い分、往復の時間は1.5倍くらいかかるだろうし。 (泳ぎが苦手には見えなかったけど、本ばかり読んでたのはそういうことか……)  消えていく健と翔子さんを見てると、里沙さんが言った。 「ねぇ、渚くん」 「はい」 「私たちのこと、どう思ってるの?」 「どうって……、綺麗な人たちだな、と」 「そうだね。よく言われる」  まんざらでもない顔をして言う。 「他には?」 「面白い人だな、と」 「それは私だけでしょ!」 「そうかも」  ちょっと怒られる。 「翔子は?」  何が聞きたいのかなぁと思ったが、 「うーん。素敵な人だと思います」 「まあ、そうだよね。なかなかあんないい女いないもんね」  里沙さんの質問の意図を測りかねたが、それ以上聞かれず、話は終わった。  波は更に高くなり、流石にはしゃぐ気にはなれなかったが、暗くなっても仕方ないので、その後も他愛のない話をぼくらは続けた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加