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 30分後、健がやっと戻って来た。大きく波に煽られている。 「次―!」  里沙さんに声をかけた。 「じゃぁ、どうぞ」  すると里沙さんが言った。 「何言ってんの、渚くんの方が年下なんだから、先に行きなよ」 「えっ、いやいや、おれ、従業員ですから」 「ただのバイトでしょ」  と、姉御風吹かす里沙さん。 「でも、お客さんより先に帰るなんて……」 「ごじゃごじゃ言わずにさっさと乗る! 私、水泳部だから」  これは譲らないなと思ってると、里沙さんが健に向かって叫んだ。 「おばあちゃんの大事な孫、送るわよ!」 「オーケー」  ということで仕方なくジェットに近づく。 「里沙さん、ほんとうに大丈夫?」 「大丈夫!」  こんな時にカッコつけられると、ちょっと惚れてしまいそう。  ぼくはジェットに跨り、小さくなる里沙さんに見送られる。  激しく上下するジェットに、思わず吐きそうになる。  ビーチは既にパラソルが閉じられ、人影もまばらだった。  ジェットから降り、待っていた翔子さんと声を交わす。 「大丈夫でしたか? 酔いませんでした?」 「ありがとう、それは全然大丈夫」 「ぼくは吐きそうになりましたよ」 と言うと、翔子さんの顔が緩んだ。 「あと1往復ね」 「何事もなく帰って来れるといいんだけど……」  小さくなるジェットがまともに前に進んでない。  20分が経った。  健の姿がなかなか見えない。 (何かあったんだろうか……)
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