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「どういう並びで乗る? やっぱ、女子、男子、女子かな」 「いいんじゃない」  赤色さんが初めて口を開いた。 「じゃぁ、翔子前行きなよ。私後ろね」 「そう」  と言うわけで、ぼくは真ん中に乗る。 (赤色さんは翔子さんて言うんだ)  海の上で初めて乗るのでさすがにワクワクしてきた。ボートは予想以上に乗り心地もいい。 「じゃ、しっかり前の人に掴まって!」 (あっ、そういうこと)  マリンジェットの健にまたウインクされた。 (そういうレクレーションなんだ……) 「じゃ、掴まるよ」  イエローさんの腕がぼくの腰にガバっと回った。 (うっ)  別のドキドキが……。 「はい、君も、早く翔子に掴まらなきゃ」 (それって、犯罪じゃないの?)  17年生きてきて、生身の女の人の腰に手を回したことなんてない。  ちょっと待ってもらっていいですか……。 「早くしなよ」 とイエローさんが急かす。 「あの、失礼します…」  おどおどしていると、 「ねえ、君、なんて名前?」 とイエローさんに聞かれた。 「渚です」 「えっ、渚? 女の子みたい」  この言葉を何度聞いて来たことか。 ……などと言ってる場合じゃない。 「渚―、いい加減、ボート出すぞ!」 と健がしびれを切らしてる。 「もう! はい、こうやって……」 とイエローさんが後ろから、両手を伸ばしてぼくの両手を赤色さんの腰に回す。 (うっ)  一瞬イエローさんの胸がぼくの背中に当たり、ぼくの手は赤色さんの華奢な腰元にくるりと回った。 「OK―! スタート!」  イエローさんが大声を張り上げる。  次の瞬間、ボートは猛烈にダッシュした。途端、振り落とされるぼくとイエローさん。 「わっ!」  あっと言う間に海の中へ……。 「ぷはっ…。もう、渚くん! しっかり持ってなよ!」 「ご、ごめんなさい」  急いでボートに上がり、イエローさんを引き上げる。 「はい、今度こそしっかり持って!」 「はい」  今度は振り落とされないように、赤色さんの腰にしっかりと腕を回す。 「OK―!」  再び、スタートするボート。どんどんスピードを上げていく。 「キャー、速い!」  珊瑚礁に囲まれたリーフ(内海)は穏やかで、波はそんなにないけど、ボートは凄いスピードで突き進んでいく。当然、波を越える度、面白いように上下する。 「きゃ、きゃ」 (あ、赤色さんもはしゃぐんだ)  その時健が急旋回した。 「わーっ!」  今度は頭からぼくらは海に突っ込んだ。  目の前に白い泡が沸き立ち、ひっくり返った体がゆっくりと浮かんでいく。 「ぷーっ」  海面に上がり、お互い大笑いする。  ちょっと大人ムードだった赤色さんも笑顔になった。サラサラだった髪がぺたんと垂れて、中学生みたいで可愛い。 「おもしろ―い!!」  リーフはどこまで行っても浅い海。とは言え、足は届かない。  ぼくが先に上がって、彼女たちを引き上げる。 「ありがとう…」  赤色さんが小さい声でぼくに言った。  「さぁ、もう一丁!」 と、威勢のいい声が背中で響く。 「うん? 渚くん、手。早く翔子に回して!」 と急かされ、再び赤色さんの腰に回す。 (柔らか……) と気持ちが手の平に集中しかけた時、 「GO―!」  イエローさんの大声とともに、猛ダッシュする。  ぐんぐん風を切って再びボートはリーフの中を疾走する。  波を次々越えながら、キャアキャア騒ぐ三人。そして、急旋回してまた海の中へ!  ブクブク……。 (あぁ、海の中だ…) 「プハー!」  と、これの繰り返し。  何度も何度も飽きもせず、キャアキャアと。10回くらいやったか。 「さぁ、ラスト1回!」  健が叫ぶや、再び猛ダッシュ&ターン。  ドパーン! ……と海の中へ。  病みつきになる。  子どもみたいに頭を空っぽにして、あっという間に30分は過ぎた。   「じゃぁ、帰るぞ」  健がビーチを指さした。 「ああ、面白かった! ね?」  イエローさんがそう話しかけたかと思うと、ぼくの背中にベタッとくっついた。今度は顔も押し付けてる。 「えっ、ちょっとちょっと!」  青少年には刺激が強過ぎる。 「へへ、サービス!」  背中に思い切り膨らみを感じつつ、ぼくは赤色さんの柔らかなお腹に再び手を回した。
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