6

1/1

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

6

 ビーチに上がってから、イエローさんは健と話し込んでいた。 「えっ、何時、どこどこ?」  今夜の「飲み会」の会場の打ち合わせでもしてるらしい。  赤色さんのジャケットを受け取っていると、 「あなたも来るの?」 と声をかけられ、ちょっと驚いた。 「えっ…、だって未成年だから」 「アルコール飲まなきゃ、大丈夫じゃない?」  ……これって誘われてるの? ぼくにも「来い」と。それってどういう意味?    でも、何だか嬉しい。 「そう、ですね。行ったことないし、ちょっと行ってみようかな……」  赤色さんは「うふふ」と笑った。  夜になった。  健に連れられ、島で10軒もない飲み屋のドアを開ける。 「いらっしゃい。あら健、今日は若いぼうやを連れてるのね?」  派手なメイクの綺麗なお姉さんがぼくを見て言った。 「あぁ、社会勉強」 「変なこと教えないように」  健とお姉さんは、かなりの知り合いみたい。 「何飲む?」 「まずはビールで」 「そちらの君は?」 「あっ、コーラで」 「コーラにちょっと混ぜてやって」 (えっ、何を?)  にこりと笑って、お姉さんがカウンターに戻る。 「渚、昼間はおいしかったな」 「えっ、何が、別に……」 「何がって、何言ってんだ。最高だったろ。サービス何回もしてやったし」  そう言えば、ターンの回数が普段より多かった気がする。 「おれ、あのイエローの子な」 「なんか言い方が下品だなぁ」 「ばーか。こういうことははっきりさせといた方が揉めないの」 「揉めるって、おれ、別にそういうんじゃ……」 「ま、そうだろうな。お前にその気があっても、経験値が違いすぎるよな、あの子らとじゃ。でもまぁ、これも勉強、勉強」  なるほど、これも勉強なのか。  さっきのお姉さんがグラスを持って来た。 「はい、ビールに特注コーラ」 「サンキュー」 「はい、どうぞ」 と言ってお姉さんがコーラを目の間に置いてくれた時、すっとぼくに近寄り言った。 「このお兄さんからあんまり変なこと教わらない方がいいよ」 「あっ、いえ、何事も勉強なんで…」 と言ったら、健が急に、 「おお、わかってきたな、渚!」 と大声で笑う。 「渚くんて言うの。いい名前ね。何ならお姉さんが色々教えてあげるよ」 と言われて、 「あ、ありがとうございます」 などと答えていると、健が言った。 「オイオイ、そっちの方がよっぽどあぶねぇーちゅーの」 「冗談、冗談」 「今日の先生はもう暫くしたら来るんだよ」 「へぇ~、そりゃ楽しみだね」 と、意味深な目をして去っていくお姉さんと入れ替わりに、ドアが開いて昼間の二人が入って来た。 「ヤッホー!」 「おーっ、こっちこっち」  なかなか勉強になるな「飲み会」は。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加