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ビーチに上がってから、イエローさんは健と話し込んでいた。
「えっ、何時、どこどこ?」
今夜の「飲み会」の会場の打ち合わせでもしてるらしい。
赤色さんのジャケットを受け取っていると、
「あなたも来るの?」
と声をかけられ、ちょっと驚いた。
「えっ…、だって未成年だから」
「アルコール飲まなきゃ、大丈夫じゃない?」
……これって誘われてるの? ぼくにも「来い」と。それってどういう意味?
でも、何だか嬉しい。
「そう、ですね。行ったことないし、ちょっと行ってみようかな……」
赤色さんは「うふふ」と笑った。
夜になった。
健に連れられ、島で10軒もない飲み屋のドアを開ける。
「いらっしゃい。あら健、今日は若いぼうやを連れてるのね?」
派手なメイクの綺麗なお姉さんがぼくを見て言った。
「あぁ、社会勉強」
「変なこと教えないように」
健とお姉さんは、かなりの知り合いみたい。
「何飲む?」
「まずはビールで」
「そちらの君は?」
「あっ、コーラで」
「コーラにちょっと混ぜてやって」
(えっ、何を?)
にこりと笑って、お姉さんがカウンターに戻る。
「渚、昼間はおいしかったな」
「えっ、何が、別に……」
「何がって、何言ってんだ。最高だったろ。サービス何回もしてやったし」
そう言えば、ターンの回数が普段より多かった気がする。
「おれ、あのイエローの子な」
「なんか言い方が下品だなぁ」
「ばーか。こういうことははっきりさせといた方が揉めないの」
「揉めるって、おれ、別にそういうんじゃ……」
「ま、そうだろうな。お前にその気があっても、経験値が違いすぎるよな、あの子らとじゃ。でもまぁ、これも勉強、勉強」
なるほど、これも勉強なのか。
さっきのお姉さんがグラスを持って来た。
「はい、ビールに特注コーラ」
「サンキュー」
「はい、どうぞ」
と言ってお姉さんがコーラを目の間に置いてくれた時、すっとぼくに近寄り言った。
「このお兄さんからあんまり変なこと教わらない方がいいよ」
「あっ、いえ、何事も勉強なんで…」
と言ったら、健が急に、
「おお、わかってきたな、渚!」
と大声で笑う。
「渚くんて言うの。いい名前ね。何ならお姉さんが色々教えてあげるよ」
と言われて、
「あ、ありがとうございます」
などと答えていると、健が言った。
「オイオイ、そっちの方がよっぽどあぶねぇーちゅーの」
「冗談、冗談」
「今日の先生はもう暫くしたら来るんだよ」
「へぇ~、そりゃ楽しみだね」
と、意味深な目をして去っていくお姉さんと入れ替わりに、ドアが開いて昼間の二人が入って来た。
「ヤッホー!」
「おーっ、こっちこっち」
なかなか勉強になるな「飲み会」は。
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