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「ところで、二人はなんて名前なの?」
乾杯をした後、健が聞いた。
「私は里沙。この子は翔子」
「へー、どっちもいい名前だね」
「今時、子が付く名前とか珍しいでしょ」
赤色さんがそう言った。
昼間、よく考えるとほとんど裸に近い恰好をしていた人たちが、服を着ると今度はこっちの方が色っぽく見えるのは何故なのだろう。不思議だ。
そんなことを考えていると、イエローさんあらため里沙さんが聞いてきた。
「ねぇ、渚くんてさ、どうしてそんな可愛い名前なの?」
「あっ、これは…、その、おばあちゃんが島のユタにこの名前がいいって言われて」
「ユタって?」
「スピリチュアル系の人?」
「そう」
「へぇ。まぁでも、こんな綺麗なところなら、孫にそんな名前を付けたくもなるよね」
そう言うと、里沙さんはジョッキのビールをぐびっと飲んだ。
「二人はさ、スタイルいいけど、運動か何かやってたの?」
健がタバコに火を付けながら尋ねた。
「私は水泳部。翔子は陸上部」
「へぇ、それで……」
と、二人をじろじろ見る健。
(えっ、そんなガン見、許されるの?)
こっちがハラハラする。
「渚くんは何かやってたの?」
翔子さんがこっちを向いてぼくに聞く。
「クラブとかは母親がダメって言うので出来なかったんですけど、スイミングには長いこと通ってました。通わされてたんですけどね」
するとすぐさま里沙さんが反応した。
「えっ、すごいじゃない。50mどれくらい?」
「大したことないですよ。30秒台に入るかどうかって感じですね」
「いや、なかなか。それで君も結構いい体してるのね」
と、今度は里沙さんにガン見される。
(目だけで押し倒されそう……)
そこで健が割り込んで来た。
「おいおい、いい体ならおれだろう。この筋肉、この腹筋」
と、Tシャツ捲し上げて見せてる。
「筋肉もだけど、よく焼けてるよね」
「海部よ、海部」
里沙さんが笑いながらそう言った。
「太陽浴びなきゃ、ビタミンDって出来ないんだぜ」
健はあくまで日焼けの効能を説く。
「ビタミンDって、何にいいの?」
「免疫や骨、あと精神の安定」
「安定してそうねぇ~」
と里沙さんが健のお腹を叩く。
「……ちょっと、お前ら、おれをバカにしてんだろ」
「してないしてない」
なんだかんだで、話は尽きないもんだなぁと思う。
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