愛々傘

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愛々傘

 物の化け物で物の怪だ。  その傘を作ったのは力はあるが女だから評価されなかった陰陽師の娘だ。その娘は呪物を作っていた。  惚れ薬を作れと娘は言われた。惚れ薬は難しい。  一つ間違うと蠅に恋するという笑えないことが起こる。蠅に恋した男はその蠅が潰された時に泡を吹いて倒れた。  色々考えて傘にした。内側に不動明王を描いた傘だ。  不動明王は縁結びの天で、人に寄り添う天でもある。まあそれっぽく、安易でなければ何でも良かったが。  一緒に傘を持てば相思相愛だ。  その条件なら事故も起きづらい。  傘は青年に渡された。  雨がふらない。  気に入った娘が生女房という最近家に来た世話係だから条件を満たすのは楽なのだが。  雨がふらない。  青年は何日も空を眺めていた。  雨がふった。  青年は用事があるからついてこいと娘に言った。 「雨強いですよ」  娘は嫌嫌ながら従った。  青年は傘を広げる。  強い風が吹いた。  傘は風に乗って飛んでいったのだった。 「俺は自由だ」  そんな声が聞こえた。  
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