古民家宿-梅雨-

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夏が近づくとやってくる『梅雨』。 鬱陶しいものだ。 私は梅雨が大嫌いだ。 けれど、一つだけ楽しみなことがある。 それは、私の家の近くにある古びた古民家宿だ。 家の近くの古びた古民家宿は、この時期の梅雨にしか開かない。 その古民家宿の26代目の女将さん、長野美恵(ながのみえ)さんが言うには、この地域が梅雨時期大雨だと知らずに訪れた人の泊まる宿の空きが急に減ったらしい。それで、梅雨の時期に期間限定みたいな感じで1代目のお女将さんがこの古民家宿を開いたらしい。 それをきっかけに、毎年梅雨のこの時期になると、決まって古民家宿を開けるらしい。 私も1度ぐらいは泊まってみたいと思うが、家族の予定が合わない。 学校の帰り、今日も古民家宿の前の道を傘を差して通る。 すると、道の脇に傘を差した40代ぐらいの女性が立っている。 (なんだろう?) そう思いながらも前を通ると、そこは古民家宿の目の前で、立っていた女の人に声をかけられる。 「あら、そこのお嬢さん。うちの古民家宿をよろしくね」 チラシを配りながらそう言われた。 つまり、この古民家宿の女将さんだろうか? 「よろしく」と言われると、余計に行ってみたくなる。
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