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よく見ればすごくかわいい子だ。
ぱっちりした目はグレーがかった茶色で、ゆるく三つ編みにした髪も、同じ色をしている。
こんな子、同じ学校にいたっけ――いや、でも、夢ならそんなの関係ないか?
わたしがそんなことを考えているあいだ、モネちゃんは南京錠をガチャガチャひっぱったりねじったりしていたけれど、やがてあきらめたみたいにプイとほうりだしてしまった。
「だめね。やっぱりこの扉、カギがないと開かないようだわ。どこかにカギが置いていないか、探してみるとしましょう」
そう言うなり、モネちゃんはトランクを持ちあげ、また階段をのぼろうとする。
「ま、待って」
「なあに? 早く脱出しないと、日が暮れてしまってよ」
「だけど……こ、これって、夢なんじゃ」
「夢?」
モネちゃんは小首をかしげて笑うと、自分の顔をぷにっとつまんでみせる。
「そう思うのだったら、ほほでもつねってみたら?」
「え。う……うん」
なんとなく拒否できなくて、わたしは、言われるままにほっぺたをぎゅうっとつねってみた。
「どう?」
「痛い……」
「ふふ。でしょうね」
でしょうね、って。
じゃあ、いったいどういうことになるわけ?
まさかこの変な迷路が……現実?
そんなことある?
そのときだった。
またしても、階段の上から何者かがわたしに呼びかけてきた。
「おい」
今度は、低くてタンがからんだような、おじさんの声だった。
ぎくっとしたわたしとモネちゃんがそちらをむくと、肉のたるんだおじさんの顔が、壁の陰からこっちを見ていた。
赤むけのつるんとした頭。
やけに大きな目には光がなくて、どこを見ているのかわからない。
だけど一番おかしいのは、その顔が、べたっと床に横置きされていることだった。
あっけにとられたわたしたちの前で、その顔はずるずると引きずられるように物陰へと後退してゆき、そのまま見えなくなった。
わたしはモネちゃんと顔を見合わせる。
「い、今の……」
「なにか変だったわね。……追いかけてみましょうか」
「ええっ?」
あのおじさんも明らかにようすがおかしかったけれど、すぐに追いかけようなんて言いだすこの子もふつうじゃない。
だけど、モネちゃんがとっとこ階段をのぼっていくのを見ると、ひとりで残される恐怖のほうが勝ってしまって、追いかけずにはいられなかった。
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