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その夜、彼女の美紀と定食屋でご飯を食べながら今日の話しをした。
金曜日の夜は、だいたい一緒にご飯を食べる。
『初恋の人でも探してるのかな?』
美紀の言葉に僕も頷いた。
『やっぱりそれしか考えられないよね。
裕子先輩ともそう話してたんだ。
でもさ、連絡先も知らないくらいの仲なのに、何で今さら用事があるんだろう?』
『え…。あ、裕子先輩ね…。
1つ上の先輩だっけ?』
『ああ、そうだよ?
こっそり相談できるのは裕子先輩しかいないし。』
『…そうだよね…。』
しばらく黙った後、また話し始めた。
『その人くらいの時代はまだ携帯がなかったんじゃない?』
ああ、そうか。
50代半ばだとしたら父親と同じくらい。
若い頃は携帯が無くて…なんてよく話しているっけ。
『いつまでも忘れられなかったのかな?
ねぇ、その人、左手に指輪してた?』
『そこまでは見てなかったな。』
『奥さんが亡くなって急に懐かしくなったとか…ずっと忘れられなくてやっと奥さんと別れたか…ずっと独身で本当に淋しくなって必死に探し始めたか…。
あ!
余命宣告されて、人生の悔いを無くしたいとか?!』
美紀は想像力がたくましいな。
『どれも理由になりそうな、違うような…、
でもやはり初恋の人を探してるのは間違いなさそうだよね。
協力してあげたい気もするけど個人情報は教えられない。
手紙を大学から送るのも、課長はダメって言うだろうな。
まあ、今日断ったから、もう来ないかもしれないし。』
ちょっと会話が途切れた後、美紀がぼそっと言った。
『探されてる人、羨ましいな。』
『なんで?』
『一歩間違えれば怖いけど…。
ずっと一途に思われてたわけでしょ。
他の人と結婚してたとしても、やっぱりその人に思いを馳せるって言うのは深く愛されてて、唯一無二の存在って感じでいいなぁ。』
『そんなもんかねぇ。』
僕はよくわからない感覚だったので、何となくの返事をした。
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