4

1/1
前へ
/13ページ
次へ

4

スバル珈琲に入ると奥の方にあの人はいた。 近づくと『来てくれると思ってたよ。』と微笑んだ。 そう、僕は誘いにのってしまったのだ。 名刺に僕も知ってる企業の部長とあったこと。 悪い人じゃなさそうなこと。 そして何より好奇心が最優先だった。 裕子先輩と美紀にも真相を教えたいと思った。 『どうして来ると思ったんですか。 住所は教えられないですよ。 来なかったらどうしてたんですか?』 『はは。わかってるよ。 これでもサラリーマンだから個人情報の取り扱いくらいはね。 ダメ元で学生課に行ったんだ。 そりゃ閉店まで待って来なかったら諦めて、もう学生課にも行かないつもりだった。 あそこで頼んでも断り続けられるのが目に見えてるし。 変に長引かせると不審者っぽいしさ。 でも…何となく来てくれる気がしてた。 色んな人と仕事をしてきて、これでも人を見る目はあるんだ。』 見透かされて悔しいやら、僕を選んでくれて何となく嬉しいやら、複雑だ。 『無理を承知でお願いしたいんだ。 この手紙をさっき登録されていた住所に送って欲しい。 もちろんお礼は支払う。 何かあったらすべて僕が責任を持つ。 頼まれてくれないか。』 そういって頭を下げた。 ええ…。 断らなければいけない話なのに、やっぱり気になってしまう。 『なんでそんなに連絡を取りたいんですか?』 とりあえず理由を聞かなければ。 岡村さんというその人はゆっくり話し始めた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加