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10分間の行間休み、岡田幸成はひたすらノートを書き写す。
「毎度毎度当てにしないでくれる?」
「感謝してます‼︎ありがとうございます‼︎マジ神‼︎」
英語の授業前はいつもこうだ。今日は体育の後の為いつもより慌ただしい。前の席の椅子に跨って岡田の机に頬杖を付いた状態で
「ほら急ぎなー‼︎あと3分ー」
と煽ってみる。
単純な岡田は書く手をスピードアップさせる。
「字、きったな…」
「しゃーねぇよ、とりあえずこれで」
私はこの時間が大好きだ。照れ隠しで嫌な態度になってしまうけれど、頼ってくれてものすごく嬉しいんだ。ザワザワした教室の真ん中で2人きり。
「終わったー‼︎あぶねー‼︎」
チャイムと同時に写し終え、岡田が勢いよく顔を上げる。
「はい。おつかれー」
至近距離で一瞬目が合って、慌てて逸らした。
立ち上がり、二列右の自分の席に着く。
私の宿題は全教科いつも完璧だ。部活を頑張っている岡田の為、いつでも写させてあげられる様にしている。私が座っていた椅子の持ち主が何か言ったらしく岡田に頭を叩かれているのが見える。
昼休み、岡田が自販機でフルーツオレを買って私にくれた。岡田なりの等価交換らしい。もう何個目になるかな?
いつもの様にタオルに包んで家に持ち帰る。
「もう何枚目になるかなー?」
携帯カメラでフルーツオレの写真を撮る。
『これからもよろしくな』
油性ペンで書かれた岡田の字が、写真一覧にまた一つ増えた。
END
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