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…
「何…で?」
あの日からもうすぐで10ヵ月。
会社から出てきた俺に美桜が駆け寄って来た。
俺を強く抱きしめるお前の冷たい身体が、俺の胸を熱くする。
「ごめんね…ごめん…気付けなくて」
俺の一世一代の嘘が誰かにバラされたのだと分かった。
「バレたか…」
「バカだよ‼︎」
涙いっぱいの強い瞳が俺を睨みつける。
俺の左目に映る美桜は膜に包まれている様にぼやけている。
やがてそれさえも見えなくなる日がくるだろう。
「辛い思いをさせたく無かった」
「私はそんなに弱くない‼︎」
冷たい風で揺れる枯れ木。
行き交う車の騒音。薄暗い道路っぷち。
会社の隣は雑居ビル、向かい側には定食屋。
ムードのカケラもありゃしない。
「ごめん。俺が弱かった…」
心を決めて美桜を強く抱きしめる。
ごめんな。愛してるよ。ごめんな…。
「今じゃないかもなんだけど…」
「え?」
だけどごめん。
言わずにはいられない…。
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