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「…ケロ。…ケロ。」
それにしても、なんだか今年は体が重いな。
この田んぼに生を受け早五年。
なんだか今年は自慢の美声にもキレが無い。
女の子を口説くよりも雨が恋しいなんて…
ハァ。俺も歳なのかねぇ?
「… …ケロ。 …ケロ。」
葉っぱを伝い落ちる雨粒を浴びて。
水で満たされた田んぼを泳いで…。
あの気持ち良さは… 何にも勝る快感…で……
あれ…おかしいな…
なんだか体に…力が入ら…ない…… …
「あっ、雨!」
「けっこう降ってきたね走ろ? …あ!!」
田んぼ際の道路を歩いていた子供は突然降ってきた雨に走りかけたが、足元を見て立ち止まった。
雨足は急激に強くなり髪や顎から水が滴る程だったが、二人はしゃがみこみ、悲しそうに一点を見つめた。
「カエル…。」
「動かないね。弱ってるのかな?」
じっと目を閉じ動かない蛙を指先でつつくと、蛙の喉が微かに動いた。
二人はまだ蛙が生きていて安堵したが、かなり弱っている様子に眉尻を下げ口をギュッと縛った。
「……ほら。」
二人は雨で冷えた手でそっと蛙を包み、蛙が踏まれぬように田んぼの脇に移動した。
大きな葉の雑草の下の泥の上に、蛙が溺れぬように葉を敷き乗せると、二人は立ち上がり蛙に手を振った。
「ばいばい…?」
「ほら走ろビチョビチョ!」
「うん!」
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