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「たしかに俺はひたすら颯と2人きりになる方法を考えていたよ。それは俺の不安の種を取り除くためだということも正しい。心中、というのも考えた。だが、たとえ心中を試みても、最後の最後で裏切られる、なんてことも十分に考えられる。だから、他の方法を考えた。そして、思いついたんだ」
「何を?」
「それを話す前に、颯がおそらく勘違いしているであろうことを言わせていた
だく」
「何だ?」
「そうなんだよ。2人仲良く死んだところで、颯が幸せだと思えるかどうかは
わからない」
「まあそうだわな」
「じゃあ、お互いが幸せになるにはどうしたら良いのか。そこで、俺はこんな
事を考えた」
「?」
「さっき、颯が勘違いしていることがある、と言ったな」
「ああ」
「それは、俺が既に死んでいるということだ」
「は?」
「俺はこの場所に来て自殺した。そして、霊体となって今颯の前にいる」
「あ、あり得ない………」
「何事も強く念じたら叶うんだよ」
「………霊体になって何をするっていうんだ?」
「こうするんだよ」
そのとき、背筋に悪寒が走った。
「こうすれば、俺は颯と一緒になれるし、颯は何も考えられなくなるから問題
ないだろ」
「何言ってるんだよっ………」
「ほーら、だんだん意識が遠のいていくだろ?もう少しで、俺は、颯と2人き
りになれる………」
おかしいだろっ、龍一は何を間違えたんだっ、と言おうとしたが、もう俺には
喋れるほどの感覚が残っていなかった。
次第に手足の感覚がなくなっていき、とうとう地面に突っ伏してしまった。
ゆっくり、ゆぅっくりと体が蝕まれていくその感覚は、一発で死ねたらどんな
に良かっただろう、という感情さえ思い起こさせた。
もう、目を開くこともままならない。
残った聴覚で最期に聞いた言葉は、
「これからもよろしく、颯」
〈終〉
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