本当の答え

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本当の答え

「僕は昨日、祐希の家に泊まった。そして、今朝、祐希の家を出た。ここまでは正しい。さて、問題はそこからだ。もし俺の思うがままに事が進んでいるなら、颯は俺が祐希の家から直接学校へ行った、と思っているな?」 俺はコクリ、と頷いた。 「OK.まずそこから間違っている。俺は直接学校へ行ったのではない。そのま まある場所へと向かったんだ。今から行くから、ついてきて」 そう言われ、俺は龍一に言われるがままについていった。 そのときの龍一は、どこか逆らえない雰囲気が漂っていた。 数十分歩いたかと思えば、辿り着いたのは「崖」だった。 「俺は祐希の家からここに来た。そして何をしたか。それを話す前に、少しエ ピソードを紹介しよう」 「………?」 「実は、俺は世間一般的に言われるゲイなんだ。まあ、俺がゲイだということ を知ったのはつい最近なんだけどな」 「そうだったのか………」 そんなこと、全くもって知らなかった。 「で、俺がゲイだということを知ったきっかけ、というものがあるわな。ゲイ だと分かるのは、当然、自分が”恋”をしたときに分かるわけだ」 「ああ」 「でもって、俺は恋をした。誰に?答えは簡単、颯だ」 「なっ………!!」 「俺は初恋の相手とついにご対面した、というわけだよ。で、俺はすぐに彼と 仲良くなりたくて、ひたすら接触を試みた。そしてなんとか掴み取った友情。 俺は有頂天だったよ」 「………それで?」 「そうなって数日は気分が良かった。でも、次第に少し不安を覚えるように なったんだ」 「どんな不安?」 「関係が壊れてしまうかもしれない、となんとなく不安を感じるようになっ た。だから、親に言ったんだ」 「どうなったんだ?」 「呆れられたよ。男が男を好きになるなんてありえない、なんて現代的社会に おいて非常に低レベルな発言をされた。俺は何も考えることが出来なかった」 「………」 「で、親は話にならない、と考えた俺は、別の友人を頼ることにした。その友 人の名前は興津祐希」 「………」 「おや、驚かないなぁ。まあそろそろそれぐらいは読めてたかもしれないな。 祐希は親とは違って、良き理解者だった。同性愛者については特に関心がある らしく、俺をよく思っていてくれた」 「………」 「でも、次第にやっぱり不安を覚えるようになった。もし、突然颯の気が変 わって俺のことを突き放してきたら………そう思うといても立ってもいられな くなり、ある考えを思いつくようになった」 「………」 「エピソードはこの辺にして、いよいよ本質に迫ろうか。結局俺が颯に送った メッセージの意味は何だったのか。それは、さっきの”ある計画”が絡んでくる んだ」 「………」 「実を言うと、正直あのメッセージを送る必要は特になかったんだ。別に送ら なくてもいずれ分かることになるから」 「………」 「颯には分かっているんだろう?俺が何を考えているかぐらい」 「………まあ、なんとなく察しはついた」 「じゃあ颯が言う?」 「そうだな、リベンジといこうか」 「じゃあ、どうぞ」
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