02「立ち回り」

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 老人を無理やり退かせた20代前半ほどの小汚いジャージを着た男は、近くにいた仲間と共に老人を指さして笑い転げていた。 (あの人、前に並んでた引き子のオジサンじゃない……)  キャバは座ったまま事の顛末(てんまつ)を見ていたが、すぐに何が起こったかは理解できた。  常連客ならこんな目立つ悪行はしないし、日頃このホールで見かける顔でもない。  晒されたSNSの情報で店を回り、数で埋めて刈り取ることしか考えてない(やから)ども。親と子の間で統率の取れた軍団、立場をわきまえたノリ打ちグループならこんなことはしない。 (勝手なことしてくれちゃってんじゃない……あー腹立つ!)  キャバは会員カードで下皿にメダルを流すと、すぐにカードを財布にしまって席を立った。  目の前では老人を突き飛ばした(やから)が目を血走らせてすでに打ち始めている。  キャバは拳を握り締めてその男を背後から見下ろすと……その視線を切り通路に向かって歩みを進めた。
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