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床に落ちた眼鏡を拾うと、立てないでいる老人の手を取りそのまま自分の肩に回してゆっくりと起き上がらせる。そのまま休憩スペースのソファまで連れて行き座らせた。
「あ……ありがとう……」
老人は何とかそう声を絞り出してキャバから眼鏡を受け取るが、手が震えてうまくかけることができない。
キャバはソファに座る老人の前に対面する形でしゃがみ、両手を添えてそっと眼鏡をかけさせてあげた。
「ごめんね、お爺ちゃん。あいつら本当にガラ悪くて」
「い、いや、あなたが謝ることでは……」
キャバは気付いていた。服装こそかろうじて一般人らしい恰好をしているが、老人からタンパク質が腐りアンモニアが混ざったような臭いがただよっているのを。眼鏡もプラスチック製の安価な老眼鏡で傷も目立つ。
「どうせ俺が文句を言っても誰も聞いてくれないし……警察呼ばれても困る……」
「お爺ちゃん引き子で台取るまで頼まれたんだよね? もうお金もらってる?」
老人は目を見開きおびえた表情でキャバを見返した。
「そ、それをなぜ……」
「そんなの分かるよ、お爺ちゃん慣れてなさそうだったもん」
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