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01「3人」
午前8時50分、上野駅コンコース。
改札から吐き出される通勤客が地下鉄への乗り換えに流れていく中、アメ横方面へ歩いていく人影はまばらだ。
ただ、その数少ない人間の中ではなぜか20~30代と思わしき男の私服姿が目立つ。
カジュアルで無難に服装をまとめた者もいるが、ジャージやクロックスといった軽装で髪を染めてる者も少なくない。そしてかなりの確率でマスクをしている。
平日の朝、そんな風貌で繁華街を徘徊する若者たち……それはかなりの比率で“専業”である。
パチンコ・パチスロを生業とする社会の底辺、いやその一歩手前で生きる者たちだ。
上野駅からアメ横に向かう横断歩道で信号を待つ身長170センチに満たない小柄な青年は、尻ポケットからスマホを取り出すとSNSアプリ“ライン”のグループメッセージを開いた。
『もう着いてるよ♪ エリちゃんとヲタくんは?』
『近くのドトールで待機してる。あといい加減に、ちゃん付けはやめないか?』
『いーやだ。エリちゃんはエリートの卵で強がっててかわいいから、エリちゃんなの』
『好きにしろ。ヲタは?』
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