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スマホを見つめる青年は慣れない手つきで指を動かした。
『いま駅を出た』
『ヲタくんが遅れるわけないじゃん。だってヲタくんだよ?』
『意味が分からない』
『じゃあいつも通りに。キャバは早め、ヲタは真ん中、僕は最後方に』
『オッケー!』
『分かった』
そこでグループメッセージが終わると、青年はスマホを無造作に尻ポケットに戻してアメ横へと向かっていった。
上野駅と御徒町駅の間に続くアメ横を中心とした繁華街には、多くのパチンコ・パチスロ店が並ぶ。
戦後復興の闇市が後のアメ横へと発展し、そのアンダーグラウンドな文化を担う一員としてパチンコ・パチスロは欠かせないものだった。
現代でこそ首都圏の玄関口は東京と上野が肩を並べるが、戦後長らく上京と呼ぶその行き先は上野だった。そういった交通や同業者が群れを成す都合のよさから、パチンコ・パチスロメーカーも支店やショールームを上野に開くようになり、通称“上野村”と呼ばれるようになった。
だが、パチンコ・パチスロに興じる若者たちにとって、そんな背景など関係ない。
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